彼と離れ一ヶ月が過ぎたある日、宅急便で一冊の雑誌が送られてきた。


何なのかすぐにはピンと来ず、パラパラとページをめくっていると、誌面に自分の顔を発見した。
 

そうだ。思い出した。

以前、ライターの知人に頼まれてファッション誌の撮影をしたのだ。


「小さくしか載らないから」と言われて承諾したのに、実際は特集ページのトップを飾るほどデカデカと載っていて驚いた。


主婦になっても輝いている女性――これが特集のタイトル。


笑顔の写真の横には、こんな文字があった。


『源紫乃さん・22歳。旦那様はあの源桐生議員の長男、光さん。
誰もが羨むセレブ夫婦です』
 

撮影をした頃は、まさか彼と離れて暮らす日々が来るなんて想像していなかった。


せっかく送ってきてくれた雑誌だけど、よけいに気分が滅入ってしまう。



これ以上は読まないでおこう。


そう思い、雑誌を閉じようとしたとき、ふと文章の続きが目に入った。



『才色兼備の紫乃さん』


『羨ましいほどの美肌の持ち主』


『柔らかな身のこなしは、同性からも憧れの的』
 


衝撃が胸に走った。


そこに並ぶ文字は、まさに彼が理想とする女性をそのまま書き出したようだったから。



“紫乃は、オレの理想の女性に育ってるよ”
 


嬉しそうにいつも言っていた彼。



でも、今の私は? 


彼が神戸に行ってしまってからの、涙に暮れる私は?