そしてこの男は今の声の主を「空」と呼んだ。

こんな名前、ありふれてる。



だけど、




「だからって困らせちゃダメだろ」





私がこの声を聞き間違えるはずなんて、ない。

ザッ、ザッ、と砂の上を歩く音が近づく。


不思議だ。たくさんの人がいるのに、なにも聞こえなくなって。頭に浮かぶのは



── " なぁ、芽依。"


── " 俺さ、ほんとに好きなんだ "




優しくて、愛しくて、その分、何倍も残酷な思い出。




足音が止んで、そっと顔を彼の方に向ければ──。