「ほんと、勿体無いよね」




そう言うと、壁は私の肩まで伸びた黒い髪に触れようと、手を伸ばした。





「触るな、気持ち悪い」




だけど、私は言葉でそれを制した。

気安く触らないでほしい。







「えー!サラサラで綺麗なんだから触りたい触りたいー!」







……そう言えば、あいつもそんなことを言ってたっけ。

するとぼんやり浮かんだ顔。だけど慌ててそれを消す。

もう二度と顔も見たくない、思い出したくもない、史上最低男。





「んもぉ、芽依ちゃんのケチー!」


「別にケチで構わないけど」