抱き締められてる。 そう気付いたのは、いつもより甘い声が鼓膜を震わせた瞬間。 耳元で囁かれる自分の名前。 私を包む温もり。 無理矢理のこの行為は 「いや……っ!」 自身を意識させるどころか、逆効果。 ──好きだよ、芽依。 私にどうしようもなく彼の記憶を思い出させる。 胸を押せば彼は、いとも簡単に離れた。