早く帰れ!このバカ女っっ。
顔を隠した本から両目だけを出し、尾関を監視する。
尾関は首を何度も傾げながら、棚から本を出しては戻し……を繰り返している。
あー、くそっ。
あいつ、帰る気配ゼロだぞ!?
しかたねぇな。また明日来るしかない……。
あきらめモードに入った瞬間、なにか異様な視線を感じる。
「………?」
振り返ると周囲にいる女性客と、本を整理している店員が怪訝そうな顔で俺を見ていた。
なんだよ。
俺は怪しいヤツじゃねぇぞ。
魔の手から必死に逃げようとしている、いたいけな男だぞ?
周囲の視線に軽く腹が立って、手にしていた本を棚に戻す。


