「……やっぱり止めとけばよかった」
次のお化けゾーンに入る手前で、成美がぴたりと足を止めて涙声で言う。
ちきしょう。
お化け屋敷ってもんは、なんで暗いんだ?
……いや、暗くて正解かも。
今の成美の表情を見たら、俺はきっと、何とも言えない気持ちになってしまうぞ。
お化け屋敷が暗いのは、きっと、こういう男の理性を抑える役割も果たしているんだ。
「……章吾くん」
「……えっ?」
天井につけられた、たった一個のスポットライト。
薄明かりの中、成美の顔がぼんやりと見える。
――……おい……、これって……。
成美は俺の顔を無言でじっと見つめていた。


