聡は教室をちらりと見る。 視線の先には、教室の窓辺にいる井ノ口のもとに向かう尾関の後ろ姿。 「なんだよ」 聡は尾関が近くにいないことをしっかりと確認してから口を開いた。 「隣のクラスの千賀ってヤツ、知ってるか?」 「……千賀?誰だ、それ」 「千賀成美」 フルネームで言われても、それが誰なのか全く分からない。 千賀成美。 聞いたことがあるような、ないような……。 女であることは間違いない。 「その子が、放課後、校舎の裏庭に来いって」 「裏庭?なんだよ、俺、シメられんのか?」