「なんだそれ。おもしろい冗談だなぁ」
「冗談じゃねぇぞ?見たって言ってんだろ?」
「……誤解だよ。おまえが見たのって、髪の毛抜こうとしていたところだったんじゃねぇの?」
「髪の毛抜くぐらいで、あんなに顔近づけるか!?」
しっかりと触れ合った唇を見たわけじゃなかったけど……。
髪一本抜くぐらいで、あんなに顔を近づけるわけないだろう?
「……章吾。焼きもちやくなよ」
階段を上り始めた聡の、クククッという笑い声が響き渡る。
焼きもち?誰にだよっ!
「妬いてねぇよ。たださ……親友の好きな女が、自分の大嫌いな女ってのがちょっとなぁ……」


