「うん、知ってる。けどさ、『嫌よ嫌よも好きのうち』って言うじゃない」
「……はあ!?」
「あんたは絶対、由香を好きなんだから」
――……こいつ、バカか?
自信たっぷりに『尾関を好きなんだから』と決め付ける井ノ口。
好きなら、お百度参りとか、藁人形とか、そんな物騒なことやったりしねぇし。
呆れ果て、返す言葉さえも出てこなかった。
そこへタイミング良く、次の授業の英語の先生が教室に入って来る。
井ノ口は「じゃ、頼んだよ」と意味不明なことを言いながら、慌てて自分の席へと戻って行った。
何を頼むんだよ?意味分かんねぇし。
出欠確認をする先生の声を聞きながら、教科書をパラパラとめくる。
ページをめくるたびに起こる小さな風が心地よくて、同じことを何度も繰り返していると……。
「尾関はどうした?」


