「おい、聡……」 あいつ、今……。 何かを抱きかかえていたぞ? 俺にはそれが、尾関に見えたんだが……。 いや、気のせいだろう。 首を傾げながら教室に入ると、井ノ口が血相を変えて俺のところに走ってきた。 「ちょっと!由香、倒れたのよ!?」 「は?」 倒れた? 今の今まで、ニヤニヤしながら聡と話していたじゃないか。 「きっと貧血よ。朝から顔色悪かったし」 いやいや、あいつの体調なんて俺には関係ねぇし。 それよりも……。