俺はそこまで薄情な男なんかじゃない。 重い足を引きずるようにして教会へと向い、チョコレート色の大きなドアをゆっくりと開けた。 「―――尾関……?」 祭壇の前に、純白のウエディングドレスに身を包んだ女……。 背を向けるようにして立っていた女は、俺の呼びかけにゆっくりと振り返った。 「……笠原くん!? どうして……」 尾関はひどく驚いていた。 俺が来るわけがないと、そう思い込んでいたんだろう。