そう言いながら近づいてくる成美の顔。
……もう…、なるようになれと、俺は覚悟を決めたんだ。
「章吾くん……。優しくしてね」
間近に迫った成美がキュッと目を閉じる。
そんな成美のむこうに見えた、イミテーションのアクアリウム。
熱帯魚の映像が、映し出されている。
『もう、好きじゃない。笠原くんのこと――』
ゆらゆらと動く熱帯魚。
あの時、尾関がじっと見入っていた水族館の大きなサメと同じ動きをしている。
『――あたしが好きなのは、聡くんだけだから』
なんだってこんな時に、あのバカの言葉を思い出すんだ?


