彼女の世界が変わらぬ理由


そういえば、どこだかのクラスに転入生が来たという話を、誰かがしていたような。

ぼんやりと思い出した十夜は、窓辺に寄って少女に笑いかけた。


「寒くねぇ? ストーブつければいいのに」


彼女は無言で十夜を見上げる。

動かし方を知らないのか。

ストーブのつけ方を教えてやると、少女は黙ったままじっと十夜の手元を見ていた。


「な。キミ、転入生だろ? 何年生? 名前は?」


相手はやはり口を閉ざしたまま、目を伏せる。


「何で美術室に来たの? キミも絵、好きなの?」


負けじと十夜が話しかけても、少女は表情を暗くしたまま沈黙を守っていた。

しばらく色々話しかけてみたが、その内十夜は根負けをして質問をするのをやめた。

こんな無愛想な転入生じゃ、いじめられるんじゃないか。

せっかく見た目はかわいいのに。

そんな心配をしてみたりした。

長いまつげに縁取られた、吸い込まれそうな真っ黒に光る目が、印象的な少女だった。