小学五年生の冬。
その日は確か雪が降っていた。
当時十夜が住んでいた場所は、雪の多い片田舎。
古い校舎は暖房設備も古く、みんな休み時間はストーブの前に集まっていた。
そんな中、いつも通り十夜が向かった美術室。
その日はいつもと様子が違っていた。
先客がいたのだ。
凍えそうなほど冷えた教室の窓辺に、少女が一人、イスに膝をついて座っていた。
雪に埋もれた校庭を、じっと眺めていた。
「…何してんの?」
十夜が小さな背中に声をかけると、その少女はびくりと肩を揺らした。
ゆっくりと振り返った彼女は、黒目がちな瞳をこちらに向けたまま固まった。
見た感じ、一年か二年生くらい。
しかし見たことがない顔だった。
児童数の少ない田舎の学校では、生徒はだいたい、それぞれの顔を知っている。



