特別講義が始まる時間になると、講義室は生徒でいっぱいになっていた。
席が足りずに立ち見をする者もいる。
どうやら来ているのは油彩科の生徒だけではないらしい。
すごい人気だと思った時、前方の席から黄色い声があがった。
飛田宗一郎が現れたのだ。
緩くカールした長い髪、無精ひげ、きっちり着こなされたライトグレーのスーツ、高い身長、温和そうな顔つき。
なるほど、見た目は確かに女子に好まれそうだ。
「すげー。かっけー飛田宗一郎!」
ついでに久米にも好まれている。
『はじめまして皆さん。飛田宗一郎といいます。今日は短い時間ですが、皆さんに少し、絵の話をしようと思います』
低く、柔らかな響きの声に、ざわついていた教室内が静まり返った。
横の席で真剣な眼差しを壇上に送る久米とは逆に、十夜は顔を下に向けた。



