彼女の世界が変わらぬ理由



少し緊張した面もちで現れた青年は、こちらを見て丁寧に頭を下げた。

黒縁のメガネ、顎ラインまで伸びたざんばら髪。

クリームイエローの綺麗なシャツにモスグリーンの細いパンツと、格好はまともだが、はき込んだスニーカーには何色もの絵の具がついている。

なるほど、美大生らしく飛田と似た匂いがした。

青年は中村側のソファーの横に立ち、マリアと安東を交互に見た。

どちらが絵を描いた女子高生なのか、わからないからだろう。

彼はゆっくりと深く、頭を下げた。


「森山十夜(とおや)といいます。この度は、俺の身勝手な行動で柚木さんにご迷惑をかけてしまい、本当に申し訳ありませんでした」


はっきりとした口調で、彼は自分の非をわびた。

そして顔を上げ、真っ直ぐにマリアを見る森山は、常識のあるしっかりした人間に思えた。