彼女の世界が変わらぬ理由


彼を思い出すことで、マリアは動揺した心を落ち着けた。

ゆっくりとまぶたを開くと、まだ中村がじっとこちらを見つめていた。

十年という月日は、気が遠くなるほどに長かった。

しかしようやく今日、希望の橋がかかったのだ。

中村の後ろに、彼の影が見える。


「申しわけありませんでした」


マリアは深々と頭を下げる。


「そんな…マリアちゃん、そんなのおかしいよ」


納得がいかない安東は、マリアの手をぎゅっと握った。

それでも彼女に「盗作ではない」と言うわけにはいかない。

盗作は、真実だから。


「…さて。どういうことですかな、飛田さん」


中村は弱ったような顔をして飛田に目を向けた。

その飛田も、同じような表情で頭に手をやる。


「それが僕にも…」


何が何やら。

そう言って、飛田は空笑いをした。