しかしマリアは桜を見ることができた。
最後の最後に、真冬に咲く満開の桜を。
マリアが転校することをどこからか耳にしたのだろう。
古びた小学校で過ごす最後の日、少年がプレゼントをくれたのだ。
水彩絵の具で描かれたその絵。
そこには、風に煽られ舞い上がる雪の中、花びらを散らせながら揺れる、桜があった。
本物の桜は結局目にすることはできなかったけれど。
彼がくれた絵は、本物以上だと思った。
日本語が話せるようになったら、きっと彼にお礼を言いにこよう。
そう心に決めて東京へと引っ越した。
春になり、東京で本物の桜を見たが、やはりマリアには彼のくれた桜の絵の方が、何倍も素敵だと思っていた。



