彼女の世界が変わらぬ理由


マリアの横には飛田が座る。

男を前にして、マリアはひどく困惑していた。

雰囲気から、学校関係の偉い人かと思った。

が、それだと自分が呼び出された理由がわからない。

担任ではなく飛田が間に入っているということは、美術関係の人か。

しかし雰囲気が飛田や顧問とはまるで違う。

芸術家、という、少々浮き世離れした感じは受けない。

相手は静かな目で、じっとマリアを見ている。

耐えきれず、飛田を助けを求めるように見上げた。

彼は優しく微笑む。


「柚木くん。こちらは、中村勘次郎(なかむらかんじろう)さんだ。この前キミが出展したコンクールの、運営を取り仕切られている方だよ」


ドクン。

マリアの心臓が大きく跳ねた。

風の音、時計の音、自分の呼吸の音すらも、すべてが一瞬、止んだ気がした。