「失礼します」
飛田の後に続き、マリアははじめて応接室に入った。
ここは外部からの来客に対応する部屋で、普通生徒は入ることができない。
部屋の中心に革張りのソファーがあり、その前には高級そうに光る木製のテーブル。
飾られているオブジェは、入院中の美術部顧問の作品だ。
窓際に飾られた白いバラの前に、人が一人、こちらに背を向け立っていた。
その客は実にゆったりとした仕草で振り向いた。
「…きみが、柚木マリアさんですか」
しわがれた声。
客は六十歳前後の、ごま塩頭の男性だった。
ダークブラウンのスーツをきっちりと着て、背筋のしゃんとした男は、マリアの目に『偉い人』という風に映る。
「すまないね、学園祭中に」
「…いえ」
男はソファーにマリアを促した。



