恋箱。




初めてのお客さんは普通のサラリーマンさんだった。



この世界に入って驚いたのは、お昼の時間帯にも関わらずお客さんはサラリーマンが多い。



営業さんが外回りの合間に息抜きに来たりするらしい。



まぁ相手の素性なんてアタシには関係無かったけど。




要はケンと暮らすお金さえ貯められればいい、それだけだったから。





でもね……やっぱり割り切ってるつもりでも緊張した。



「初めてなので宜しくお願いします。」


「ホントに初めてなの???」




お客さんの方も驚いてた。


そりゃそっか。



初日のコに当たるなんて通いつめてても少ないと思う。気に入ったコがいれば指名しちゃうし。


本当はこっちが接客しなきゃいけない筈なのに、なんだかんだと気を使ってもらってなんとか所定の50分を過ごした。






はっきり言って何をしたとか全然覚えてない。



それからその日は3人のお客さんの相手をして……。




必死に仕事の手順を思い出しながらこなしているうちに、いつの間にか深夜になっていた。



ぐったりと仕事を終えたアタシが待合室で呆けていると店内のマイクが鳴り響く。



「あやちゃん、受付へ来て下さい」