恋箱。



「アツシ、こっち」


川口にアツシと呼ばれてカウンターに入ってきたのは長身で色黒のいかにも遊んでそうなオトコ。


ちょっと年上かな?


チャラい感じが前面に出てるアタシの苦手なタイプ。自分の事を棚に置いてなんだけど遊んでそうな人はついつい避けてしまう。



「常連のあやちゃん♪今は合宿で免許取りに行ってるから久々なんだけどね~」


「こんばんは~アツシです」


そう言って頭を下げたアツシは見た目のイカツイ感じとは違って子供みたいな笑顔。


その笑顔で何人も騙してるに違いない!!!




「ども~あやです♪川口は人遣い荒いから頑張ってくださいね~!!」



「ちょっとあやちゃん!!そんなに荒いか~??俺」



「大掃除に客こき使ってんの誰~???」




そんなアタシ達のやり取りにくすくす笑うアツシ。


この店は大事な隠れ家。


従業員の子にはみんな頑張って欲しい。可哀想な店長川口の為にもそういう気ぐらいは使う。



盛り上げ役に徹しても不思議とイヤじゃないんだよね?





仕事でオンナの子らしくはしてたけど正直疲れてた。

素でいられる大切な場所。それがここ「シアン」なんだ。