あの日から、何年たったのだろう。

しんしんと降り積もる雪に化粧した山の奥深くは、妖怪の住まう場所。

魑魅魍魎、あらゆる妖怪が住んでいる。

妖怪は、人間の妬みや怨み、憎しみや狂気…そんなものから生まれるものも多いらしい。

従って、妖怪は人間を深く深く憎んでいる。

隙あらば、命だって狙ってくる。

それが妖怪の妖怪たる存在意義だからだ。

だから、ここは人が来てはならぬ場所。



…そう、いつも言われている。

「なのに!なんで!また来てるのよぉ!!」

白い髪と肌。うさぎみたいな紅い目をした女の子が叫んだ。

「こんなにしょっちゅうやって来て!危ないって言ってるのに、殺されたいの!?わたしだっていつも守ってあげられないんだから!…守らないけど!!もう、もう!知らないんだからね!!?」

根っからの真面目さんらしいところがまた可愛い。
雪女だというこの銀河級に可愛い子は、華奢な体を仁王立ちさせて、柔らかそうな頬を膨らませながら怒鳴った。

怒りながらも、なんだかんだ優しい所が隠しきれていないのがこの子らしい。

「あはは。怒ってる雪可愛い~」

雪女だから、雪。

単純だけど、でも似合ってるからいーや。

「かっ、…!?」

雪は誉め言葉に慣れてないらしく、いつもオレが誉めるたびに顔を赤くする。

この反応も毎度毎度ながら、全然飽きない。超絶可愛い。

「…っ、ニヤニヤしないで気持ち悪い!そうやってからかうの、趣味が悪いわ!」

頬をプクッと膨らめながら、怒ってることをアピールする雪。

なんだこの可愛い妖怪。天使の間違いなんじゃないか?

「からかってないよ?本気だって。雪に会えるなら殺されたっていいくらい。雪は可愛いよ。誰より可愛いオレの雪…愛してる」

おもわず抱き締めて耳元で囁くと、ビクッと身じろきしてさらに赤くなった。

…ヤバい可愛いかじりたい。

「っ!そういうのは、結婚相手に言うものよ!」

「オレまだ17だし。結婚したくても出来ないし。そんな冷たいコト言われると泣いちゃいそう」

オレ、一応人間にはモテてるんだけどなぁ。

「人間は家どうしの決めた相手と結婚するの!その相手以外にそんな事言わないの!」

「それいつの時代?」

ちょっとずれてるツッコミも、天然ぽくて可愛い。

…でも他の女を薦められるのは地味にへこむんだけどな。