戸惑いを隠しながら、熱いお茶を差し出す。

漢方にも使う薬草入。
少しくどさがあるけれど他の薬草も入れて味を整えた体を暖めるお茶。

「みすぼらしい幼子がわたしの敷地で死ぬのは目覚めが悪いのよ。死体を棄てるのも面倒だもの、しょうがないけど生かしてあげる。飲みなさい」

「ぁ…………」

受け取ったまま、じっとお茶をみている男の子に、なんだかイラッとくる。

毒でも入っているとでも思っているの?

これだから…!

「っ、嫌なら-」

飲むな。と言おうとした時、

男の子がゆっくり湯飲みに口をつけた。
こくり、と喉が動く。

飲んだ…。

ほう、と小さくついた息。
その固まっていた瞳が人間味を帯びてきて、幼げに揺れる。

「…あったかい…。おいしい」

男の子の消え入りそうな声が意外で、思わず戸惑う。

「そ、そう…」

…人間に、わたしの作ったものを美味しいと言われたの、初めてじゃないかしら…


そして男の子は唇を震わせて…溢れるように泣き出す。

「うっ、ひっく…ふえぇ~…!!」

「っ!?」

えっ…なんで!?

「ああー!ゆきんこ泣かした!」

「にんげん泣いた!」

「よわっちーにんげん!」

ちょっ…、なんで小鬼達にからかわれなくちゃいけないの!

で、でも、たしかに言い方酷かった…?!

って、なんで人間なんかに気を使わなきゃいけないのよ!?

「…ああもう!」

どうしたらいいか分からなくて、とりあえず小鬼達にするように男の子を抱きしめた。

「はいはいよしよしっ。男が泣くんじゃないの!」

ぽんぽんと背を叩くと、男の子はわたしの着物を強く握って、さらに泣き出してしまった。

「わあぁぁぁんっ!!!」

薄々感じてはいたけれど、
1人で雪山に倒れていた上に周囲に大人の人間の気配もなかった事を考えると…この子はもしかして…と嫌な想像が脳裏をよぎる

…同情はしないけれど

はあ…わたしはなにをやっているの…

「ああ!にんげんずりーだ!」

「ゆきんこ!おらもおらも!」

「ゆきんこはおらたちんだ!」

小鬼達が騒ぎ出して。

「うっ、うえぇぇぇえ!ひっく…ふえ~!!」

男の子と小鬼達の涙の合唱が始まった…!?

「分かったから!もう!紅も蒼も翠も来なさい!」

痛い頭を我慢して、4人を腕の中であやしながら、泣き止むのを待った。

ああ…気が遠い…。