雪は儚く消えていく


布団に入れて少しずつ温かさを取り戻してきた男の子の身体は、やがてノロノロと動き出した。

「…ん、」

あ、気がついた。

男の子はゆっくり目をあけた。

「おー、起きた起きた」

「人間起きた!」

「あそべあそべ」

小鬼達が騒がしく男の子の顔を覗く。

「あっ、ちょっと」

ああ、起きたばかりの人間にそんなに近付いたら…

「う…うわあああ!!!?」

「「「ぎゃああああ!?」」」

やっぱり…。

小鬼達は小さくても鬼だから、顔つきは般若みたいにしている。慣れれば、可愛いのだけど。慣れれば。

でも、大きな声に弱い所があるから、男の子の声に逆に驚いてしまった。

「ひっ、なん、な、んだお前ら!わあああッ来るなぁ!」

「なななななんだバカ!」

「ややややるだかバカァ!!」

「ここここてんぱビャカァ!!!」

ワタワタしだす四人。翠は両手を上に上げ片足で立ち変な威嚇をしだして、紅はもはや何を言っているのか、呂律が回っていないじゃない。

もう…しょうがないわね。

「紅、翠、蒼。よしなさい。ほらこっちにおいで」

「ゆきんこぉ~!」

「おっかないだあぁ」

「ゆきんこ、こいつ殺すだ~!」

小鬼達は泣きながらわたしにしがみついてきた。

そのうちの、特に号泣して鼻水をわたしの着物につけている翠の頭を撫でながら、ビクビクと身を固める男の子に威嚇する。

怯えてる癖に助けは求めないのね…まるで迷子の狼のような男の子だわ。

この子程の歳なら、もっと感情的でもいいくらいでしょうに。不器用なのか大人びているのか…。

…それでも。

「おはよう、人の子。生きててよかったわ」

たとえ子供でも、やっぱりわたしは敵意を向けてしまう。

男の子はわたしに気付いて、ビクッと身構えながらわたしの方に目を向けた。

男の子の目が大きく見開かれる。

わたしの白い見た目に驚いたのかしら…

「………」

それならいつもの事だわ。

みんなわたしをみて、ギョッとして、訝しんで気味悪がるのだから。

「雪に埋もれていた死にかけのお前を、九尾様の恩意で救ってあげたのよ」

…それにしても、男の子は石になった様に固まって…なんだか、ぼーっとした、熱い目でわたしを見つめてくるのだけど…

「日が昇ればわたしが吹雪を鎮めてやるから、それまで大人しくしていなさい」

一体、なんなの…?