小鬼達に男の子を小屋まで運んでもらった。

普段あまり使わない布団を出してみる。
人であった頃と同じ生活をしたがる妖が泊まりに来る時もあるから、それ用の。

嫌いな火を珍しく起こし、お湯を用意する。

「うっ…、熱い」

触れているとじくじくと指先の感覚が無くなりそうになる。

いや、人間にとっては心地よい暖かさなのだろうけど…

雪女のわたしには、溶けてしまいそうなほど熱い。

「ゆきんこー。服脱がしただ~」

「褒めて褒めてー!頭撫でて欲しいだー!」

「すっぽんぽん!ゆきんこみてぇにちべだい」

男の子の着ていたものは着物とは全然違う、初めて見るもので、わたしには分からなかった。

だから時々人里に降りて人に紛れて遊んでいる小鬼達に脱衣を頼んだ。

「まかせるだよ!」

と自信満々に胸を張っていたから頼んだ。

…そう、頼んだのはわたし。

「………あなたたちって…」

けど…。まさか引き千切るとは…。

見事に跡形も分からない程ビリビリに破いてしまっている。どうするの、これ…

なんだか頭がいたくなってきた。

「…アリガトウ。そしたらその子、この湯の中に入れて。いい?少しずつよ」

「すこーし…すこーし」

翠が一生懸命やってくれる。

「じゃあ紅。その子にお湯をかけて。優しくね」

「わかっただ」

ぱしゃぱしゃお湯をかける。

「肩までゆっくり浸けるのよ。よろしくね」

「「あーい」」

よし。…ここは二人に任せるとして。

あとは…食べ物と、火鉢と、湯たんぽ。

それくらいかしら?

「蒼。あなたはこっちよ。お願い」

「おー」


男の子を布団の中に入れたのは、それから1刻過ぎたくらいだった。