じんわりと、身体の芯が暖かくなっていく。

重たい心臓の音が鈍く響く。
熱い血が胸に、指先に熱を灯す。

ああ、懐かしい感覚だ。

「ん…」

目を開けると、ハルキと小鬼達が、心配そうな顔でわたしを見ていた。

「雪…っ!」

「「「ゆきんこ…!」」」

どうして泣きそうな顔、してるの?

「心配してたんだぞ!急に倒れて、3ヵ月も全然起きねぇし…!」

3ヵ月…。

そっかぁ。もうそんなに時間が経ったのね。

ハルキったら、いつもより少し窶れているかしら。目元の隈も、渇いた薄い唇も…せっかくの色男なのに勿体ないわ。

そっとハルキの頬に手を伸ばしてみる。

冷たい…。

冷たいという感覚も久しぶりで、本当にわたしは人間に戻ったのだと実感する。

「ハルキ…。わたし、人間に戻ったの」

「え…?」

「…わたし、ハルキと一緒にいても…いい?」

ほんとは、まだ少し怖い。

…ううん、すごく、すごく怖い。

我が儘なんて初めて言うわ…。

拒絶されるかもしれない。嫌悪されるかもしれない。嫌われて、手を払われるかもしれない。


小さなひ弱な人の子だったのに、いつの間にかわたしの心に入って来た、困った人。

ハルキがいないと、わたしはもうダメになってしまったの。

心臓の高鳴る鼓動を感じながら、ハルキの言葉を待った。

ハルキはわたしの手を握り返すと、…わたしの手が温かかったせいだろう。

少し驚いた顔をして…ふっと微笑んだ。

わたしの恋した、優しい笑顔。

「…逆にどっか行ったら、許さねぇけどな」

「…うん」


ああもう。ハルキの馬鹿。


幸せで、嬉しいはずなのに、涙が溢れて止まらないじゃない。