……ここは?
…ああ、そっか。
わたしは、死んだのだった。
父様が居なくなって。結局わたしは咎められて雪の中に捨てられて…
そして…九尾様に会ったのだ。
人の中に居て尚、人と成れなかったわたしを、九尾様が雪女として拾って下さったのだ。
「娘よ。我が愛する娘よ」
わたしを喚ぶ声が反響する。
九尾様…?
「けじめは、ついたか?」
…。
「やはり、人の中に戻りたいか」
ごめんなさい。
…ハルキと共に、居たいのです。
「…謝るな。お前を妖怪にしたのはこの九尾だ。その為に、酷いことをした」
酷い事など。
…人の邪気など、九尾様が付け入らずとも、遅かれ早かれわたしには同じ死が待ち受けていた筈です。
「知って…、いたのか?」
…心の、どこかで。
でも、九尾様も、寂しかったのでしょう。
永い時を生きるから。どうしても…
共にいてくれる家族が、愛すべき存在が欲しかったのでしょう。
「…ああ、そうだ。すまなかった。お前が愛しかったのに…お前が欲しくて、…結局、余計に苦しませるだけしか出来なかったのだ」
いいえ。……いいえ。
今は、感謝しています。
初めて居場所を貰えた。
初めて愛してると言ってもらえた。
それだけじゃない…
九尾様のお陰でハルキに逢えて、人を赦せたのですから。
「お前は、優しい。人として生きるには残酷過ぎる程、優しすぎる。…だからこそ、人の世から奪い取ってでもそばに居て欲しかった」
優しい、なんて。数百年、人を恨んだわたしには似合わないのに。
恨んで、呪って。そのくせ九尾様の優しさに都合よく甘えて、そして最後には人間のハルキを選ぶ、本当に浅はかで恩知らずな女です。
「……困ったら、いつでも助けてやる。…特別にな」
…ありがとうございます。
大好きです。…お母様。