絶え間無く降る雪が村を白く染めながら、打ち首の刑は執行される
村人達は子どもも一緒に全員集まった
神事の真似事のように四つの柱を立て、その中心で父様が力なく座っている
やめてと叫んだ。父様を殺さないでと叫んだ
けれど周りの人間に押さえつけられる。構わずに声を荒らげるわたしに、民衆は蔑む視線を投げかける
…わたしは、生まれてきてはいけなかったの?
わたしが生まれてこなければ、父の愛を求めなければ、こんな結末にならずにすんだのなら
なぜ、わたしは生まれてきたの?
折れた腕が億劫だった
足りない指が不快だった
砕けた片足が邪魔だった
何より早まる鼓動が重たくて、力の篭らない枯れる喉に癇癪を覚えた
父様の背後に立つのは狐の面を被ったあの人
この村で最も清浄で、この場において絶対的正義を背負う時期頭首
菊村様は静かに刀を抜いて白銀の切っ先を天に向ける
『村に不浄を呼び寄せし禍津神。人に仇なす血雨鬼。そは全てを招きし罪人の命を以て、村の穢れは払われん』
やめて…やめて!!
『畏れ多くも妖山に、御座す尊き狐神。穢れたその首賜り、信仰深き我が村にどうか豊穣と平穏訪る事を乞い給ふ』
届く筈もない手を伸ばした
『ーーーー死ね、化け物の親め!!!』
菊村様が刀を振り下ろした瞬間と、今までわたしを抑えていた人の力が緩んだのは同時だった
ふらりとよろめき、私の体は人の群れから飛び出した
瞬間
世界が赤く染まり、わたしの足に、手毬のように転がる何かが
何かが、ぶつかった
「ーーーーーユキッ…」
「……………………ぁ、っ…?」
震えながらも、触れずにはいられなかった
ぬるりとした熱い赤は、ずっしりと重い
白い雪は容赦なく降り積もって、まだ暖かいそれを冷やしていく。その汚い白で消そうとする。
白髪混じりの傷んだ髪が指に絡まる。浅黒い肌には無数の傷痕。細い目は腫れ上がって。カサついた口元には微かな笑みが。
みるみるうちに青くなる…必死に抑えても、その熱い赫色が断面から流れ出て止まらない…これは…
これは、なに。
「い、やっ…。嫌ぁぁぁぁぁぁああぁッ!!!」
村人達は子どもも一緒に全員集まった
神事の真似事のように四つの柱を立て、その中心で父様が力なく座っている
やめてと叫んだ。父様を殺さないでと叫んだ
けれど周りの人間に押さえつけられる。構わずに声を荒らげるわたしに、民衆は蔑む視線を投げかける
…わたしは、生まれてきてはいけなかったの?
わたしが生まれてこなければ、父の愛を求めなければ、こんな結末にならずにすんだのなら
なぜ、わたしは生まれてきたの?
折れた腕が億劫だった
足りない指が不快だった
砕けた片足が邪魔だった
何より早まる鼓動が重たくて、力の篭らない枯れる喉に癇癪を覚えた
父様の背後に立つのは狐の面を被ったあの人
この村で最も清浄で、この場において絶対的正義を背負う時期頭首
菊村様は静かに刀を抜いて白銀の切っ先を天に向ける
『村に不浄を呼び寄せし禍津神。人に仇なす血雨鬼。そは全てを招きし罪人の命を以て、村の穢れは払われん』
やめて…やめて!!
『畏れ多くも妖山に、御座す尊き狐神。穢れたその首賜り、信仰深き我が村にどうか豊穣と平穏訪る事を乞い給ふ』
届く筈もない手を伸ばした
『ーーーー死ね、化け物の親め!!!』
菊村様が刀を振り下ろした瞬間と、今までわたしを抑えていた人の力が緩んだのは同時だった
ふらりとよろめき、私の体は人の群れから飛び出した
瞬間
世界が赤く染まり、わたしの足に、手毬のように転がる何かが
何かが、ぶつかった
「ーーーーーユキッ…」
「……………………ぁ、っ…?」
震えながらも、触れずにはいられなかった
ぬるりとした熱い赤は、ずっしりと重い
白い雪は容赦なく降り積もって、まだ暖かいそれを冷やしていく。その汚い白で消そうとする。
白髪混じりの傷んだ髪が指に絡まる。浅黒い肌には無数の傷痕。細い目は腫れ上がって。カサついた口元には微かな笑みが。
みるみるうちに青くなる…必死に抑えても、その熱い赫色が断面から流れ出て止まらない…これは…
これは、なに。
「い、やっ…。嫌ぁぁぁぁぁぁああぁッ!!!」