雪は儚く消えていく

何度も何度も、わたしは拷問役に詰め寄った

なんで父様が
化け物はわたしなのに
不幸を呼んでいるのはわたしなのに

なんで。なんで

拷問役は答えなかった

嫌そうに顔を顰め、菊村様のご判断だと、父様が、本人が認めているのだと、唾を飛ばしながら言った

わたしはその度に殴られ、追い出された

でも、響いてくる

拷問にあい父様が悲鳴をあげているのが聞こえる


父様が死んでしまう

たった一人のわたしの家族

わたしに赦された唯一の居場所

父様が死んでしまったら、わたしはどうすればいいの

父様はたった1人、わたしを我が子だと言ってくれた人なのに




どんな場所にも抜け穴がある

わたしはこっそり忍び入って、白い壁の向こう…小さな格子の窓から父様を見かけた


父様の衣服はボロボロで血に染まり、足は折れ顔は腫れ上がって、手なんて指が…不揃いで

ボロ雑巾のように無惨に転がされて


わたしは必死に父様を呼んだ

何度も何度も

やがて父様はゆっくり顔を上げて、わたしをみて力なく微笑んだ

『…ああ…、何かと思えば幻が見えよる…。…わしの大事な…大事な娘よ…』


『今まで…すまなんだなぁ…すまなんだ…父親、なんに…なんも出来んで…お前を助けも出来ない弱い父で…すまなんだ』



『だがやっと…父親らしいことが出来る』



父様の優しい声が、一番欲しかったはずの言葉が、わたしには信じられなかった

慈愛に満ちたその言葉
あれだけ求めた優しい言葉

そのはずなのに


沸き上がるのは悲しさでも嬉しさでも父への愛でもなく。
…頭の中で、なにかが滅茶苦茶に壊れる音。


ふつふつと湧き出る感情の渦
怒り。裏切り。そんなどす黒い感情を渦巻かせた



………どうして今更
何もかも、もう全て取り返しがつかないのに

わたしの体は傷だらけで、骨も折れてる。腕も力が入らなくて、脚も早く走れない。
目は片方見えないのよ。
ずっとずっと殴られ蹴られてきたせいで…もう子を望むことすら出来ない。

全て失った。助けてくれるどころか、身を守る術すら教えてくれなかった人が。

なんて言った?
大事な娘?すまなかった?何も出来なかった?助けてやれなかった?

どうして、今、言うの

貴方が見捨てた。すまないなんてどうして言えるの?何もしなかった…助ける気も無かったんじゃないの?

そう思ってくれてるのならどうして…今まで助けてくれなかったの

どうして…どうして今まで、言ってくれなかったの!?


私は、私はーーーーーー

『……は。はははっ!あっははははははは!』

そう、狂っていたのよ。最初から。

色んな人に化け物と言われ続けて来たけど、その時初めて自覚した

皆が正しかった
わたしは、ほんとうにほんとうに、矛盾だらけで愛のない、傲慢で冷酷な化け物だったんだ