雪は儚く消えていく

菊村様が呆然としていたところに交代の係が来てしまい、慌てて菊村様は外に出された


そしてまた拷問が続く

痛みは感じないはずなのに、わたしは自然と涙が溢れた

初めて流す涙に拷問役は歓喜し、拷問はさらに酷くなる

でも、止まらなかったの

『……そ、れは…いけま、せ…ん。菊村様はこ、この村の…ぉ、長、と、なられる…お方…です。…菊村様は、この村に、必…要な、方』

『みんな、菊村さ、…を、ぉ、お慕いして…。菊村様、も、みんなが…お好きで…。なのに…菊村様…みん…な…、憎む、なんて…そんな悲しいこと、ダメです』


痛い


『化け物が…1人死ねば、みんな…みんな少しは気が晴れます。わたしは…もう、疲れたんです…死にたいんです』


痛い。痛い


『化け物の、わたしを、尊き…御身の…菊村様がお助けくださる、なんて…あってはな…なりま、せん』


ああ…これでいいの。よかったの

だって、どうせ助かってこの村から逃げたとしても、わたしを受け入れてくれる場所なんかないじゃない。

どうせ同じ運命を繰り返すだけなのだから。

『名前を、呼んで…下さって…。笑って、下さって…。それだけで十分で…。菊、村様』


なのに、何故?


『菊、村…様。ありが…う…ござい、ます。ありが…とぅ…ござ…ます』

『だから……もう、………………行って』

どうして涙が出るのか、分からなかった






打ち首まで、あと5日

それまで続くはずの拷問は突如として終わった

格子が鈍い音を立てて開き、わたしは出ていくように言われて…呆然と震える足で外まで進む

拷問が終わった…?打ち首にならない…?

何故。だって誰かが生贄にならないと、村人達のわだかまりは解消されない

けど…わたしは…

拷問からの、死からの解放への僅かな安堵がじわりと胸に染み込みはじめた

私は…生きられるの…?
また、菊村様と父様に…会えるの…?

微かな光が胸にともろうとしたその時、数人の村人達とすれ違った

瞬間



『ーーーーーーっ!!?』



手首に縄をかけられ連れていかれる人

それは、間違えようもなくわたしがよく知る人で


『…………………なん、で…………父様が…』

やつれた、ボロボロの姿の父様だった