雪は儚く消えていく

拷問は昼も夜も続いた

片目を抉られ、焼けた炭を抱かされて、背中は叩かれ続けて皮が剥げ、気を失いかければ水をかけられて目が覚めて

普通なら悲鳴を上げ泣き乱しそうなくらい、休む間もなく拷問を受けていたのに、不思議と痛みは感じなかった

ただぼうっと、自白するものもないのに拷問だなんて、余程鬱憤が溜まっていたのだろうなと彼らの嬉々として釣り上がる口元も見て思うだけ

痛覚が完全に無くなっていたんだわ

けれど痛みはなくとも、身体は動かなくなっていく


3回ほど日が登り、暮れようとした頃

拷問の係が交代する時、少しの間時間が空く

唯一ほっと息をつける時間に、鴉の声と、牢の格子がカタンと音を立てた

もう交代が来たのかとぼんやり見ると、切羽詰った顔の菊村様だったから、すごく驚いたんだわ

『そこに、いるのか…!?』

そして、こんな状況なのに、みすぼらしい格好を、もっと醜くなった姿を見られるのが恥ずかしくて、とっさに胸元を隠したの

片目だけになってしまった目で見える菊村様の顔はあんまりにもぼんやりしていて、それ以外は覚えていない

『すまない…こんなにも遅れてしまった。あぁ、あぁ、本当にすまない!今なら抜け出せる…私が守るから、私が全て何とかするから…お願いだ、私と共に逃げてくれ!』

すまない?逃げてくれ?

何を、仰っているんだろう

菊村様の言葉が理解出来なかった

『君を助けたいんだ…!君が罪を負う必要なんてない。こんな村の為に、こんな愚かな輩の為に、君が…君が、死ななくていいんだ』

苦しそうに俯いて、格子を握り締め声を絞る菊村様

村人達が、優しい菊村様がここに来るのを許すはずが無いのに…まさか…

『き、く…む…ら…さ…』

ああ、やっぱり優しい人

こんなにボロボロに成り果てたみすぼらしいわたしに、まだお声を掛けてくださるなんて

でも駄目なの
もう遅いの

今更、なの

とても甘美なその誘いは、わたしに向けられてはいけないものだから