雪は儚く消えていく

わたしは思い上がっていたのかも

菊村様がお優しいから、ついわたしも普通の人間になれたような気がしていた


だから、罰が当たったのね





その年は不作の年

雨続きで日が足りず、作物が育たない状態で、川も氾濫し山も土砂が崩れる

畑も田んぼも全滅
家を失う人も多かった

夏はなんとか乗り切ったけど、冬は…


食物が足りず、村人達の仲にも亀裂が入り始めて、村は限界だった


そんな中転がった人の死体

村人の不安はついに爆発した

そして、行き先の無い怒りは化け物に向かう



『化け物が不幸を呼んでいるんだ』

『化け物が殺した』

『化け物は死体を貪り男を誑かしている』

『化け物め、生かしてやっているのに恩知らずな』

『化け物が化け物が化け物が』



『殺せ!穢れた化け物に罪を吐かせ生贄に差し出し、山の神に助けを乞うのだ!』



民衆の不和を逸らすためには、わかりやすい「標的」を作って視線を逸らせばいい
瞬く間にわたしはすべての厄を背負わされた

捕まる最中、人混みの中で青ざめる父様と、村人に詰め寄る菊村様を見た

わたしはといえば呑気なもので、抵抗もしないまま捕まっても、不思議と何も感じていなかった
…いえ、現実逃避か、はたまた放心していたのかもしれないけれど
申し訳ないような、でも少し穏やかな気分になる

父様と菊村様。

二人のおかげで人を嫌わずに死ねること。憎しみや悲しみだけじゃない、人間らしい感情をもって死ねることを感謝しながら




暗く湿った拷問部屋に、震える足を踏み入れた