雪で前が見えない中を、小鬼達は楽しそうにぴょんぴょんはしゃいで先に進む。

あの子たち、連れ出しておいてわたしの存在を忘れていない…?なんて思っていると、それを見透かしたように小鬼達が立ち止まってわたしに大きく手を振る。

「まったく…わたし、吹雪は嫌いなのに…」

わたしが死んだ日も、こんな吹雪の中だった。

痛くて寒くて怖くて恨んで。

流した涙も氷になって、恐怖に心を支配されながら、わたしは…


「ゆきんこー。ここじゃここじゃ」

「面白いモン落ちとるだ。早く来い!」

「来るだ来るだ!」

小鬼達に急かされる。

…あれ?

河童に達磨に山姥様…

なぜか、他の妖怪達や、…この山の主、狐の九尾様までいる。

どうしてみんな来てるの…?

私が近付くと、妖怪達はぱっと表情を明るくして一斉に私を輪の中に入れた。

「おお、雪女。やっときたか」

「雪女が来たぞ。遅かったの」


「…みんなして集まって、なんの騒ぎなの?」

楽しそうな妖怪達に少し呆れる。

妖怪が愉快そうにしている時なんて、ろくなことないんだけど…

黒々とした光の灯らない一つ目の妖怪が、急かすようにわたしを輪の中心に押していく。


って、これは…!


「どうじゃ?人間が、死んでおるのだ」


まだ小さい…10代か、それくらいの年の男の子供が倒れている。

意識はないみたいでピクリとも動かない。雪に埋もれて、頬も凍ってる。

なんで、人間の子が、こんな山奥に…?

「ヒヒヒっ。無様じゃのう。惨めじゃのう」

「おお憎々しい。はよう喰いたい」

「妬ましい怨めしい。腕も足もちぎってわしの無くした四肢につけたいのう。目玉をくり抜いてわしの目に欲しい」

「美味しそう。童の肉は柔らかいでな。腸はとくに美味ぞ」

「へそから裂き、はらわたを引きずりおろしてしゃぶりつきたいのう」

妖怪達は惜しそうな声色で次々に話しかける。
けれど、襲わない。
理由なんて一つだけに決まっている。



「…だが、お前のためにとっておいたのだ」


遠くまで響く低い声が、わたしを指した。