雪は儚く消えていく

父様は弱い人だった

けど、化け物と囁かれるわたしを、血の繋がった娘だと…家族だと言ってくれた唯一の人

その言葉は世界の全てで、わたしが生きていていい免罪符で、わたしをこの世に縛る呪いの言葉


化け物たるわたしを娘だと、村人皆の前で告げてしまった愚かな父様

父様は村八分されて、わたしに対する村人達の態度は更にきつくなって

それでも初めは父様もわたしを守ろうとしてくれたけれど

傷が増え、

罵声が増え、

誠も儀も、全てが嫌悪と後悔に変わる



父様は、心労でどんどんやつれてしまった


わたしは異質で、父様はいつも血のつながりさえ周りから怪しまれていたのを何度もきいた

わたしは異質で、母様は産まれたわたしを見て悲鳴をあげ、化け物と罵り拒絶したと何度も聞いた

わたしは異質で、村人全員の言う事をなんでも聞く従順な奴隷にならないと生かしてやる意味が無いと言われた

何度も何度も何度も何度も


いつしか父様自身もわたしと目を合わせることも言葉を交わすこともなくなっていった


夜中にわたしが血濡れて帰ってくると、父様は目を逸らし、ひとりになってすすり泣いていた

わたしが父様と呼ぶ度にビクリと肩を震わせて顔を強ばらせていた

わたしの存在が父様を苦しめていた事も理解してたのに、わたしの頭には死ぬことなど毛頭浮かばなかった



…それでも。よかったのよ

わたしは、襖越しに聞こえる嗚咽に、その灰色の血の繋がりに、乞食のように惨めに卑しく縋りついていた


愛されていると思い込んでいたかった

人間として、誰かに愛されていると、誰かを愛していると思い込んでいたかった


だって、人間は誰かに愛されていないと、きっと生きてはいけないものだから



妖怪になって初めて気づいた。

わたしは、あんな村でも、どれほど否定されてもなお、生きていたかっただなんて…




ふらふらと、罵声を浴びては血を流し、父様の涙に安心する…

醜く愚鈍な、枯れた心で一生をさ迷うのだと


あの時は思ってた

そんな日々が変わった、青葉の薫る晴れの日ーー



あの人に、出逢った