妖怪にとって睡眠とは、過去の記憶の渦に呑まれることを指す

死して尚この世に執着しなければならないほどの執念を、繰り返し思い出すために

例えどれほど残酷な過去でも、己の心を引き裂こうとも

泣きながら。

叫びながら。

それでも過去を手放せず、何度も何度も繰り返す


忘れたくないの。

憎悪も。嫉妬も。憎しみも

もっと幸せに生きられるはずだった

彼らと同じように生きる権利があったはずだ

妬まず、恨まず、呪わず…そんな尊く素晴らしい世界を、どうして享受することが許されなかったのか

どれだけの苦しみを耐え、忍び、相殺してきたと思う。

その醜悪に歪んでしまった執着だけが生きた証。


なのに、それすらも無かった事にされるのか


認めない。許せない。
違う違うチガウちがうーーー

こんな理不尽な死に様を晒す為に、この世に産まれてきたわけじゃない!

悔やんでも悔やみきれないその想いだけが、わたしたち妖怪が唯一残す『ココロ』なのだから





ーーーー瞼を閉じて、暗い闇に意識を委ねて

ほら、瞬く間に引きずられるわ

黒い腕がわたしを掴む

腕を、脚を、腹を、首を


…そして、思い出す

懐かしい痛みと共に

忌むべき苦しみと共に



始まりの記憶が、幕を開ける