気がつくと、人里の麓まで来てしまった。

黒い粘土で押し固められた人間の作った道と、地面に突き刺されたのっぽな石の柱が見える。

最近の人里の近くは気が付けばこんな粘土ばかりになってるわよね。黒くて臭くて硬いからわたしは嫌いなのだけど。

…どうしよう、ここまで来るつもりはなかったのに。

小鬼達はまだ来ていないようね…すれ違っても居ないはずだけど…。

-ちらりと、人間の姿が見えた。

「-っ!!」

とっさに身を屈めて影に隠れる。




『化け物!殺せ!』

『災厄を招く化け物め!』

『殺せ!化け物も、ー化け物の親もだ!』



カタカタと、身体の震えが止まらない…。

嫌でも思い出してしまう…あの悪夢。



『-なあ、***、ずっと、すまなんだ。すまなんだなぁ…っ』

嫌だ、違う
そんなこと望んでない…!


『お前に何もしてやれなかった。だがやっと…親らしいことが出来る』

やめて…やめて…!!!

『ーーーー死をもって償え、化け物!!!』

赤い花が、雪を染める。



『い、や…っ!!嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!』


叫んだ。
声。

飛び散る。赤。


響く。遠くー…




跳んだ-頭。



「嫌っ…いやぁっ…!!」

怖い…怖いっ!



「-雪?」

ビクッ!

「吃驚した…どうした?こんなとこまで…」

優しい声、とても聞き慣れた声に、縋るように振り向く。

ハルキだ

私の顔に一瞬驚いて、それからふわっとした優しい笑顔を見せてくれた。

優しくそっと髪を撫でられて、その手の温度に少し落ち着く

「はる…き?それに…」

小鬼達も…。

「雪がこんな街の近くまで降りてるなんて珍しい。…俺が恋しくなった?なんて」

「ひゃっ!」

問答無用で抱き締められたっ!?

「あーっ!ゆきんことられたぁ!」

「ゆきんこはおら達んだ!」

「ハルキの二重人格クズやろーっ!!」

小鬼達はホポーンと変化を解いて、泣きながら抱きついてきた。

「なんだよお前ら。雪はオレのだっつーの」

ハルキっ!なんで腕に力込めるの!

というか、なんかさりげなく変なとこ触って…!?

「やぁー!ゆきんこはおら達んだよおぉ!」

「ゆきんこはやらねぇだよお!!」

「びええ!!ゆきんこぉお~!!!」

痛い!怪力痛い!

あと翠は泣きすぎ!鼻水とりなさい!