深い深い夜の雪の中に、小さな小屋が灯をともす。

その小屋の中に住む、白い髪に白い着物に白い肌。全ての色を喪った白い影…それがわたし。雪女。

わたしは一人、ここに住んでいる。

随分昔に人を呪い、人に殺されて、妖怪になった頃から。

何十年も、何百年も、ずっと。

ずっと、憎しみを捨てられないまま。




人間は嫌い。

だから、人里になんか降りない。

でも、寂しくなんかないの。


-ガラっ

小屋の一つだけある小さな窓が元気よく開く。
ボロロッと雪の塊と一緒に入ってきたのは3つの影。

「はーっ、ちべたがった。ちべたがったなあ」

「ああちべだい。ゆきんこー、遊ぼー」

「あそべあそべ。体あっためるだ」

小さな小鬼達が手毬のように転がりながら明るい声が小屋を明るくする。

「もう。入る時は戸口から入ってといつも言っているでしょう?」

紅と蒼と翠の、三つ子の小鬼達。

わたしの着物の袖を引っ張って、外に出ようと毎回駄々をこねる、困った鬼達。

この子達に捕まって、ぐるっと足元を囲まれてしまえば逃げられないのを悟る。

でも、吹雪にはいい思い出がなくて…小鬼達は可愛いけれど、正直乗り気じゃないのよね。

「外に出たらまた冷えるわ。暫くここでじっとしない?」

この子達は怪力だから、遊びなんて云っていられなくなるからなあ…

せめて小屋で過ごそうと提案する。

「やー!あやとりはちぎれるべ」

「筆も折れちまうだ」

「ゆきんこが雪の中さおらんでどーするだ」

やっぱりだめだった。呆気なく却下されたわ。
いやまあ、確かにそうだけど…

「さー、いこいこ」

「面白いの見つけただ」

「落ちとった!面白いの落ちとっただよ!」


「きゃっ!もう…分かったから走らないで!」

小鬼達に引っ張られたり、押されたり。

真っ暗な吹雪の中を駆けて行った。