郁香と直登の勤務先は村白芽衣子と弥刀が管理するすずらん荘の近くに新しく事務所を構えた。

直登はその事務所で楢司の新社長となった優登のサポートをしながら郁香の代わりに代表代行をしている。


郁香はやっとつわりが落ち着いてきたところで、出産準備をしながら仕事にも参加する兼業主婦。


すずらん荘に毎年、若者たちが研修にくる姿を眺めながら、子育てをしていくことだろう。


「女子社員の皆さん、我が社は女性の感性を活かす場がたくさんあります。
例え、美大やデザイン学校を卒業していなくても、どんどん意見を言える場があるのです。

そういう才能ないんだぁーー!っていう人も何かを見て『ステキ!きれい!かわいい!』って思える感性があれば我が社にも関連会社にも優秀なデザイナーやアドバイザーがいますから活躍する場は必ずあります。

そして、我が社はサービスをする担当です。
意見を言ったからには、長きにわたって管理、めんどうをみていってあげなくてはいけません。
私のお腹の子と同じく、私が携わった仕事1つ1つを、『はい、終わった』じゃなくて、今はどうしてるか?ってときどき見て上げなくてはいけないんです。じゃないとグレてしまいます。

飛びぬけて有能さを売りにできる仕事はないかもしれませんが、普通に輝いてほしいと思います。
普通に輝くOLを目指して、私についてきてほしいと思います。」



「普通に輝くOLかぁ・・・郁香もなかなか言うなぁ。
そしたら僕のコレクションは光り輝いてるってことかな。あははは。」


「例の段ボールですが、代表のご命令により処分させていただきました。」


「ちょ、ちょっと・・・ウソだろ!おい、碓井!って・・・なんでおまえがここにいる?」


「郁香代表が会長には私が必要だとおっしゃって、呼んでくださいましたのでね。」


「なっ、なんだと!じゃ、社長秘書はどうした?」


「ご心配なく。あっちは広登様の指導の下、私の後輩が堅実に優登社長の補佐をしておりますからご心配なく。」


「そ・・・そうか。じゃ、また、よろしく頼むわ。」


「はい、何でもおまかせください。
子育てのアドバイスなどもできますので、子守の節も私がいれば安心ですよ。」


「こも・・・わかった。
さてっと・・・そろそろ奥さんを検診に連れていく時間だから、行って来るぞ。」


直登は郁香と車で産婦人科へ連れていく途中で写真のことを話した。


「清登からきいたんだろ?いくらなんでも処分はひどいんじゃないか?」


「もうあの写真の私はいないわ。
今の私は愛してくれないっていうの?」


「そ、そんなことない!実物の郁香の方がずっとだなぁ・・・・・。」


「だったら写真はもういいでしょ。」


「だがなぁ。あれは僕の宝物で・・・」


「もうすぐ、宝物の段ボールは増えるわ。
もっともっと増える可能性もあるのよ。」


「あ・・・そうだな。今度は自分で撮ることになるのかぁ。
わかった。ならば、郁香は常に実物を抱えることにするってのでどうだ?」


「いいわね。とりあえず、この子が飛び出してからの予約だけど。うふふ。」


「ああ。それでまた、俺はがっつくことになるんだろう。」


「もう・・・バカ。」







普通に輝くOL    おしまい。