「おはようございます、早速ですがこれを」

起きて早々、ルークはカシスを手渡してきた。
寝ぼけながらも齧ってみたがやはり変化はなく、ルークはまた作業台へと戻る。

コレットは朝食がわりのカシスを食べ終えるとすることがなくなってしまったので、ルークを観察することにした。

彼は昨日からずっと働いている。
コレットの命がかかっているから当然なのだろうが、ルークは焦る風でも面倒そうでもなく、どこか楽しげだった。

(メリッサが天才で変人だと言っていたけど、こういうことかしら)

それにしても凄い集中力だ。
さっきうっかり躓いて大きな音をたててしまったが、何の反応もなかった。
コレットにはとてもこんな風にひとつのことに何時間も取り組むなんてできない。

「こんにちはー」

ふいにドアが開いて、小さな女の子が入ってきた。このときばかりはルークも作業を中断して笑顔で立ち上がる。

「いつものお薬ですか?」

「うん」

どうやら常連客のようで、ルークは手際よく薬を用意し始めた。

待っている間に店内を見回していた女の子がふとコレットのほうを見て、コレットはぎくりとした。

案の定女の子は興味津々で近づいてきて、逃げようとしたコレットを掴む。

「ル、ルークさん!」

助けを求めるコレットの声に振り返ったルークは、慌てて女の子からコレットを取り上げた。

ルークのきれいな手の中に、コレットはすっぽりと収まる。

「それなあに? 魔法のお人形?」

「そうですよ。壊れやすいので触らないでくださいね」

ルークは彼女の手が届かないように、作業台の上にコレットを移した。

女の子はまだコレットが気になるようだったが、ルークがやんわりと追い出してくれてコレットはほっと息をつく。