ワイバーンの耳をつんざくような鳴き声が辺りに響き渡る。


その声は、なんだか悲しみを訴えるような叫び声にも聞こえる。…気のせいだとは思うけど。



「来た」

隊員が上空を見上げて言う。あたしもそれに続いて空を見上げた。


「え…?」


ワイバーン20体がこちらに向かってきた。すぐに異常に気づく。


「他のワイバーンもこんな状態なの?」

「あぁ…異常だけどな」



何が異常かと言いますと、別に大群でこちらに向かって来たことではない。いや、それも炎系統のワイバーンにしては滅多にないことではあるんだけどね。

どの系統のワイバーンにも共通しているんだけど、彼らの瞳にはいつも強い意思があり、迷いは何一つない。


興奮している時でさえ、その意思は瞳から伝わってくる。

興奮していないときは、とても優しくこちらを出迎えてくれる。


あたしは、そんな優しくて真っ直ぐなワイバーンが好きなんだ。



だが今迫ってくるワイバーンは、


光を失ったような虚ろな目をして


狂ったように空を飛んでいた。