「ありがとうございました」

頭を下げる。

お客様はニコッと微笑んで店先を出る。


どうも、神崎由良です。

季節は巡り、あたしも18歳になりました。


今あたしは魔法屋の方で手伝いをしています。


どうやら、あたしは今から2年くらい前に意識を失って倒れたらしく、目が覚めたのは数か月前。

あたし、花の17歳は眠って過ごしました。トホホ。


目が覚めたら、なぜか病室だったんだ。

お母様と千沙さんが泣いていて、お父様は安堵の表情をなさっていた。


どうしてこんなに眠っていたのかというと、お医者さんが言うには、魔力を完全に失ってしまったことが原因なんだって。

それと、あたしが負っていた酷い怪我。

特に右太ももは、まだ治っていない。

治癒魔法を使ってもらっても、あまり効果はない。

でも、目覚めてからすぐ行った、必死のリハビリのおかげで、なんとか歩けるまでに回復した。


魔力を完全に失って、酷い怪我までして…あたしどんなにキツイ仕事をしていたのかな?

どんなに頑張っても、思い出せない。


そう、魔力や体力だけでなく…記憶も失ったんだ。

16歳の9月から、あたしが目覚めるまでの記憶。


だけど、記憶を復元させる魔法なんてない。

自然とその記憶が戻るのを待つより他がないの。


最初は記憶が揃っていないことに対してすごく不安を抱いていたし、情緒も不安定だった。

だけど、お医者さんや両親、千沙さんたちと、記憶が揃うのを気長に待とうと話をしてだんだんと落ち着きを取り戻していった。

今ではゆっくりのんびり毎日を過ごしています。