それに、サファイアがこの世を去ったから、その魔力の影響を受けていた学園の近くに住む魔物達も、きっと落ち着きを取り戻すことだろう。

そう、あたしの仕事も完全に終了した。


あぁ、今、充分なくらいあたしは満たされてる…


あ…

でも、あと一つだけ…

これ言ったらワガママかな…?

だけど、最後くらい、いいよね…?


翔太の方に目を向けると、翔太はまだ眠っていた。


最後くらい、ワガママ聞いてくれるよね…?


あたしは力の入らない足にムチ打って、翔太の元へと覚束ない足取りで歩いた。


「ちょ、ちょっと由良!?」

後ろの方で美玲の声がするが…気にしない。

そして、翔太の傍に座り込む。


「翔太…聞いてくれる…?」


当然のことながら返答はない。

構わずあたしは話を続ける。


「あのね、あたし…翔太があたしのことを始めて"仲間"だって言ってくれて、あたしに居場所をくれたこと、すごく嬉しかった」


あの時の翔太の声…今でも鮮明に思い出せるよ。


「それにね、いろいろと助けてくれてありがとう」


いつも助けてくれたよね。幼い頃からずっと。学園でも怪我を治癒してくれたり、お粥作ってくれたり…


「その優しさが、嬉しかったよ」


その優しさに、苦しめられたりもしたけれどね。


「あたし、翔太に出会えて色んな感情を知ったんだよ」


嫉妬したり、胸が締め付けられるように苦しくなったり、翔太と会うだけで何故か胸が痛くなったり…

翔太が楓花さんと話しているだけで、目の前が真っ暗になるような感覚に陥ったり。