サファイアが今望むことは、"ガーネット"を潰し、魔物退治屋の頂点に立つこと。

しかし世界第一位の魔物退治屋に、世界第二位の魔物退治屋が戦うなんて、"サファイア"の立場からすると分が悪い。大きなダメージが出るのは避けられない。


しかしその当主と同程度の強さを持つあたしを倒せば、"ガーネット"の戦力は大きく削られる。

世界1とはいえ、戦力が大幅に削られた"ガーネット"など、"サファイア"の敵ではない。

倒すことなど動作もないだろう。


そうだ。

サファイアが倒すべき相手は、あたしだ。

あたしを倒しさえすればいいんだ。


だったら、これは罠?

敢えてこの強い魔力を辿らせて、あたしを誘き出すつもりなのかも。

いやしかし囮にしたら魔力が強すぎる。

でも囮だという線も捨てきれないし…


「由良?」

美玲の心配そうな声でハッと我に返る。


「どうしたの?行くよ?」

前を見ると、千沙さんと雅人はすでにあたしの十数メートル前を歩いていた。

「あ、ごめん」

あたしは二人に追いつくため軽く走った。


何とか二人に追いつくと、大丈夫かと心配された。

あたしは笑って答えた。


「ねぇ、これって罠じゃないかな?」

「「は?」」
「といいますと…?」

三人とも訳が分からないという顔をした。

「こんなにも簡単にサファイアの魔力を辿れるなんて…あまりにも上手くいき過ぎている気がするの」

そしてあたしの考えを伝えた。

あたしが言い終わると3人ともハッとしたようだった。

しかし暫く続いた沈黙の後、重々しく千沙さんが口を開いた。


「仮に罠だとして、今はただ魔力を感じる方に歩くことしか、他に方法はないと思われます」

確かに千沙さんの言う通りだ。

今はそれしか方法はない。


あたし達は頷き、また歩き出した。

先程より気を引き締めながら。