「じゃあ皆が揃ったことだし、行きますか」

あたしが言うと急に空気感が変わった。

張り詰めるこの空気は緊張感をもたらす。


あたしは皆の顔を見渡した。

すっかり真面目な顔になっている。

気持ちの切り替えは流石だよね。


頬が緩みそうになったけど、それをキュッと抑えて呟くように言った。

「…みんな、死なないで」


隊員達は芯のある大きな声で返事した。

いつも思うが、本当に頼もしい仲間だ。

皆の顔を見てると、何だか安心してしまう。

緊張した心はとっくに溶けてしまった。




さあ、行こう。


ゆっくりと振り向いて、足を"サファイア"の館へと向けた。

それと同時に制服の右ポケットから愛用の杖を取り出す。


そして先陣を切って歩き出した。

あたしはただ前を見ていた。


大丈夫、きっと救える。

翔太を助けてあげられるよね?

そのために、今まで頑張って来たんだ。

そのために、厳しい修行も耐え抜いて強くなったんだ。

全く不安がない、とは言い切れないけれど、こんなにも沢山の信頼できる仲間がいるんだ。

大丈夫。


胸に言い聞かせ、"サファイア"のお屋敷へと歩く。


その数歩後ろに美玲、雅人、千沙さんが続く。

更に後ろを、隊員達が列を揃えて歩く。