「由良さん」


綺麗な水のように透き通っている、あたしの大好きな落ち着いた声が聞こえた。

それが耳に届くとすぐ、あたしは振り返った。


その瞬間、あたしの頬は状況をわきまえずに、つい緩んでしまった。


美玲も雅人も、聞こえた声の方を見た。


「あっ…」

美玲が思わず感嘆の声をあげる。


雅人は黙ったまま目を見開いた。


"ガーネット"の皆もすっかり黙って、その声の持ち主となぜかあたしを見ていた。

それも凝視です。


頬を赤く染めてるのは変わらないまま。

全く…この人が綺麗な人だからってすぐに顔に出しちゃうんだから。


「ごめんなさい。すっかり遅れてしまいました」


「いや、あたし達も丁度今着いたところだったから大丈夫だよ。

それに、手間かけさせて悪かったね」


ゆっくりとしたスピードでこちらに向かってくる彼女に、あたしは二っと笑った。


「いいえ、そんなことありません。由良さんの頼みとあれば、私にできることは何でもしますよ」


ふふふ、と上品に笑ったその姿は美しすぎた。


「ありがとう、千沙さん」


千沙さんは足を止め、あたしにまた美しい微笑みをくれた。

あたしも微笑み返した。