「あれ〜?小さい時に小型犬に追いかけられて泣いてたのはどこの誰だったっけな〜?」

美玲はニヤリと余裕の笑みをこぼした。

雅人の顔は少し強張る。

「それは今関係ないだろ!?」

「じゃあいつまで経ってもニンジンが食べられないと先生に怒られてたのはどこの誰だったかなあ?」

まさかこれも雅人?

そんな一面があったとは…初めて知った。

しかし雅人は少し考えるような仕草をして口を開けた。

「それは翔太だろ」

「あ、そうだったっけ…」

「やーいやーい間違えてやんのー」

形勢逆転と言わんばかりに雅人がニカっと白い歯を見せて笑った。

「小学生は黙りましょう」

美玲は口調こそ冷静だが、顔は真っ赤だった。

「俺は高校生だっつーの!」

雅人は叫ぶ。

それにしても翔太にそんな一面があったとは…ちょっと可愛いかも…


はっ!今はそんなこと考えている場合じゃなかった!

早く喧嘩を止めなくちゃ!


「も、もう喧嘩はやめよ?ねっ!」


二人の中に割って入ると、

「「別に喧嘩じゃないけど」」

冷たい視線が降ってきた。


「ゔっ…ごめん」


小さく縮こまった。


「お前、正気なのか?」

雅人が珍しく真面目な顔をする。

「もちろんよ」

「怪我するかもしれないんだぞ?」

怪我しないわよ、と美玲は言った。

「怪我したとしても、すぐに治せるわよ。あたし魔法薬学や治癒系統の魔法は得意だもの」

そういう問題じゃねぇよ、と雅人は強い口調で言い切った。