こんなにも欲張りで身勝手な自分は嫌。

もっと素直でいたいのに…

自己嫌悪に陥りそうだね、こりゃ。

そんなことを思いながら歩いていたので、いつの間にか庭園の奥へ来てしまったらしい。

パーティ会場はすっかり見えなくなった。


でも、今はその方が都合がいい。

楓花さんや翔太の姿が見えない方が、辛い思いをしなくて済むから…


あたし、本当に身勝手だ。

こんなことを思ってしまうなんて。


自嘲気味に笑いながら歩いていると、真紅の大小様々のバラが咲き乱れる場所に辿り着いてしまった。


綺麗…

思わず溜息が出てしまう。

月の光を浴びて、凛と咲くバラに心を奪われた。

バラに近づこうと一歩踏み出すと、コツっと何かに躓(つまず)いた。


「ん?」

何にぶつかったんだろう?


その物体を手に取ると、それはクリスタルだった。

誰かの強い想いや記憶が形となって現れた結晶の名称が、クリスタル。

クリスタルには様々な色があるけど、これは透明だった。


「どうしてこんなところにクリスタルが…?」


クリスタル月の光に照らして眺めていると、急に頭痛が襲ってきた。

「…っ」


い、痛い…

まるで頭が割れるようだ。

どうしていきなり頭痛が起こったの?

あたし、別に変な物を食べたわけじゃないのに!


ふとクリスタルを見るとクリスタルは光り輝いていた。

それは月の明かりのせいではなく、クリスタルそのものが光を発していた。


「…っ!」

頭痛が酷くなり、それと同時に映像が流れ込んできた。