月明かりに照らされた庭園は、まるで夕闇に浮かび上がる空中庭園のよう。

様々な種類の植物が植えられていて、まさに庭園だった。

青に黄、白に赤…

大小様々な花が、月明かりの下で咲き乱れていた。


どれもこれも美しく、見れば見るほど心が癒される。


楓花さんのことも…いっそ忘れてしまおうか。


どうしてあの場に楓花さんがいたのか。


もうその理由は大体分かってるんだ。


それに、いくらどうにかしたいと思っていても、"ガーネット"のあたしにはどうすることもできない。


あたしは、無力だ。



弱冠16だというのに、世間の人々から厚く信頼されている翔太とは大違いだ。

翔太とあたしは同い年なのにね。

笑えちゃうよね。


あの場所にいたということは、きっと楓花さんは"サファイア"の関係者だということだよね。


こてはあたしの勝手な考えなんだけど…

楓花さんは翔太と婚約しているんじゃないかな…?


なんだかそんな気がするの。


そうでもないと、彼女の立場であるのに、あの場所に立つということはできないよね?


あたし達高校生はあと数年経てば法律上結婚できるわけだし。

翔太だって当主として働くわけだから充分生活していけるだろう。

いつ結婚したって不思議じゃない。
可笑しくも何ともない。



…それで…いいよね。


二人とも幸せになれる。

苦労しながら結婚生活を送るということもないだろうしね。


二人が結婚することがいいことだとは分かっている。

頭では、理解している。


でも、心がついていかない。

心から喜べない。

たぶん、今のままじゃ表面上だって喜べないと思う。


いつのまにこんなにもわがままになっていたんだろう。

あたし…自分勝手すぎる…