「由良、今日はゆっくりしなよ?退院したばかりなんだから」

美玲の優しさが心に染みる。


「ありがとう。でももう大丈夫だよ」

あたしは微笑み返した。

「それならいいんだけど…まぁ部屋でゆっくりしてて?
ご飯できたら呼んであげるから」

「ありがとう」


すると、由良、と呼ぶ声がした。

それは、大好きな人の声で。


「荷物もって行ってあるから」


え?

いつのまに持って上がってくれたの?

あんなに量も多くて重かったのに…

「ありがとう!」

嬉しくってつい、叫んでしまった。


「……」


…不愛想だなぁ、もう。

全く何で固まってるんだろうね?

別にあたし変なことしたわけじゃないのに。

だって普通にありがとうって感謝しただけだよ?

ちょっと叫んじゃったけど…


…まさかあたしの言葉が聞こえてなかった…とか!?

耳遠いのかな?


だってあたし、あんなに叫んだのに

というか叫んじゃったのに!!


いや、そんなわけないか。

まぁ、いいや。放っておこう。

そのうち動き出すよね!


そう思って階段をトントンとリズムよく登っていく。



だからこの時、

「……反則だろ」

翔太が呟いていたことをあたしは知らない。